「性売買産業を拡大させる、女性処罰をやめろ」――韓国で広がる性売買女性処罰法の全面改正運動

韓国で今、性売買をした女性への処罰規定をなくすことを求める運動が全国に広がっています。「性売買産業を拡大させる、女性処罰をやめろ」。各地で性売買を経験した女性たちや支援団体が声を上げ、9月17日には改正案が国会で発議される予定です。日本でも売春防止法の見直しが議論される今、韓国の女性たちがなぜ「女性を処罰するな」と訴えているのか、その声を紹介します。
仁藤夢乃 2026.09.15
誰でも

韓国では今、性売買をした女性を処罰する規定をなくし、性売買女性を処罰する法律を全面改正することを求める全国的な運動が行われています。

9月15日には全北で「全国集中リレー」の共同アクションが行われ、9月17日には法改正案が国会に提出される予定です。

韓国では、2000年と2002年に群山の性売買業所で起きた火災惨事をきっかけに、2004年に性売買に関する法律が大きく改正されました。(日本も同じ時期に火災によって性売買女性が亡くなっていますが、そのような運動は起きませんでした。)

性売買を女性個人の問題ではなく、女性に対する暴力や構造的な性搾取の問題として捉え、斡旋や買春を処罰し、被害女性を支援する制度がつくられたことは大きな前進でした。

しかし、それ以前の制度が日本の売春防止法の影響を受けてつくられてきた歴史もあり、現在の法律にも性売買をした女性のうち「自発的」とみなされた女性が処罰する規定が残されています。

今、韓国では、この女性処罰条項を削除し、性売買をした女性を処罰しない法制度へと転換することを求める運動が全国各地で行われています。

「性売買産業を拡大させる、女性処罰をやめろ」

「性売買女性処罰条項を削除せよ」

「性売買処罰法を全面改正せよ」


韓国・全羅北道で、性売買を経験した女性の支援や性売買・性搾取問題に取り組む『全北女性人権支援センター』の女性たちによるデモでのパフォーマンスの様子

このような行動と記者会見が、韓国全土で行われています。

韓国の女性運動は

  • 性売買をした女性を処罰対象から外す(非犯罪化)

  • 法律上の中心概念を「性売買」から「性購入(성매수)」へ変え、処罰の対象を「性売買行為者」から買春者(性購入者)へ転換

  • 現行法で一定の要件を満たした「性売買被害者」に限定されている保護を、すべての「性購入の対象となった人」へ拡大

  • 性売買の斡旋、オンライン・プラットフォームを使った広告・斡旋などへの規制を強化し、性搾取による犯罪収益の没収・追徴、買春需要の遮断を重視する ことを求め

「売った女性と買った男性の双方を処罰する現在の仕組み」から、「売られた側を処罰せず、買う側・斡旋する側・利益を得る側に責任を問う仕組み」への転換を求めています。

韓国では、性売買をした女性のうち「自発的」とみなされた人への処罰規定が残る一方、2004年に成立した性売買防止法に基づき、性売買から離れるための支援が公的制度として整備されています。相談や医療・法律、住居、自活、就労など、生活再建までを支える仕組みがあります。

こちらは大邱で性売買を経験した女性への相談・自立・居住支援などを行いながら、性売買・性搾取のない社会を目指して活動する大邱女性人権センターの女性たち。

「性売買処罰法を全面改正せよ」 「性売買処罰法を改正せよ」「性売買女性の人権を保障せよ」「買春需要を根本から断て」などのプラカード

「性売買処罰法を全面改正せよ」 「性売買処罰法を改正せよ」「性売買女性の人権を保障せよ」「買春需要を根本から断て」などのプラカード

2022年に私も現地参加したソウルでのデモの様子。

3000名の女性たちが、性売買女性の処罰に反対して声を上げていました。

仁藤夢乃 Yumeno Nito
@colabo_yumeno
ソウルで性売買防止法改正連帯の集会と行進に参加し、フランス、韓国、日本の性売買経験当事者で深い交流をしてきました。映像はデモの参加者の列。女性を処罰せず支援し、性購買者や業者を取り締まるよう改正を求めて。こんなにたくさんの女性が、これ以外にも全国で声を上げていて、力をもらいます。
2022/09/25 13:43
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女性を処罰することでは、性売買の背景にある貧困、暴力、虐待、搾取や、買う側によって生み出される需要といった構造的な問題に対応することはできません。それどころか、処罰されることへの恐れが、女性たちを支援や必要な制度から遠ざけることにもつながります。

日本でも現在、売春防止法の見直しが検討されています。そこでも女性に対する処罰規定を残す方向で議論がされました。それでは、これまでの制度が抱えてきた根本的な問題は変わりません。

必要なのは、売る側の女性を処罰するのではなく、その人権を保障し、必要な支援につながることのできる制度へ転換することです。そして、性売買を女性個人の問題として扱うのではなく、女性を性の商品として買う需要や、そこから利益を得る性売買産業を含めた構造そのものに目を向けることです。

女性を処罰しないことは、単に「罰則をなくす」という問題ではありません。女性の人権を守り、性売買の構造的な問題に対応するための出発点です。

韓国で今、全国の女性たちが求めている法改正は、日本が売春防止法をこれからどう変えていくのかを考えるうえでも、重要です。女性の人権尊重を中心とした法改正が必要です。

***

日本でも女性団体や支援団体がこのように声を共に上げる社会になってほしいと思っています。この後のレターで、Colaboが長年支え合っている韓国の性売買経験女性たちによるスピーチも紹介していきます。

## 性売買産業を拡大させる女性処罰をやめろ!

## 性売買処罰法を全面改正せよ!

2026年9月23日は、性売買防止法が施行されてから22年となる日である。私たちはこれまでの時間を振り返り、性売買の現場で命を失った女性たちを記憶し、性売買・性搾取のない世界への願いを込めて、今日ここに立っている。

2000年と2002年に起きた群山の性売買業所火災惨事は、性売買産業の実態をありのままに露呈させた。鉄格子で塞がれた窓、外から施錠された扉。その中で女性たちは命を奪われた。

人間の尊厳よりも利益を優先する性搾取の構造が生み出した、明白な惨事であった。

私たちの社会は問わなければならなかった。

なぜ女性たちは逃げることができなかったのか!

なぜ国家と社会は、この暴力を放置したのか!

性売買防止法は、その反省と省察の上に誕生した。

性売買を女性に対する明白な暴力であり、構造的な性搾取であると明確にした、歴史的な前進だった。

法律の目的は女性を処罰することではなく、性売買を維持している巨大な構造を変え、女性の人権を守ることである。これこそが性売買防止法の本来の趣旨である。

この22年間の歴史は、私たちの社会に確かな変化をもたらしてきた。

性売買集結地が女性の人権という観点から閉鎖され、性売買の斡旋と買春を処罰するという社会的な基準がつくられた。

性売買を経験した当事者たちは沈黙を破り、自らの経験を語り始めた。そして性売買を女性個人の問題ではなく、構造的な暴力として捉える認識も広がってきた。

こうした変化は、性売買防止法という法的基盤の上で、性売買のない社会をつくるために粘り強く闘ってきた性売買経験当事者、女性人権運動、市民社会の長年にわたる努力によって生み出された、かけがえのない成果である。

しかし、こうした変化と努力にもかかわらず、私たちは今日、改めて現行法の限界を問わざるを得ない。

性売買防止法は今、本当に機能しているのか。

22年が経った今も、性売買は私たちの社会の至るところに日常的に存在している。

オフラインだけでなく、オンラインとデジタル空間が結びつき、SNSやプラットフォームを通じた斡旋や広告が横行している。さらには、国境を越えた性搾取まで目の当たりにしている。

性売買産業は日々、巧妙化・高度化している。しかし、法律と政策は変化した現実に十分対応できていない。

特に、性売買産業の構造や、そこから利益を得る者たちの責任を十分に問わないまま、性売買の現場に置かれた女性たちを今なお処罰している。

性売買処罰法が女性を「被害者」ではなく「処罰の対象」として縛り続ける限り、巨大な性売買・性搾取産業を根絶することは決してできない。

2025年の性売買実態調査によると、韓国の男性のうち、生涯に一度でも買春を経験したことのある男性は10人中4人にのぼるという。

これほど買春需要があふれている現実の中で、国家はいったい誰に責任を問うているのか。

性売買処罰法が性売買をする女性も同時に処罰するその瞬間、性売買の構造的な問題は、女性個人の責任へとすり替えられる。

性売買の現場でどのような暴力や支配があったのか、誰が性を買い、誰がそれを斡旋して富を築いたのかは十分に問われないまま、ただ「なぜそんなことをしたのか」というスティグマに満ちた問いだけが、真っ先に女性へ向けられる。

その結果、女性たちは処罰とスティグマの中で、自らが受けた被害や経験を明らかにし、声を上げることが難しくなる。

結局、女性を処罰する現行法そのものが性売買の構造を覆い隠し、性搾取産業に対する社会的責任を免除する盾となっているのである。

現行法と私たちの社会が変えなければならないのは、性売買を支えている構造そのものである。

性売買産業を維持しているのは、性売買をする女性たちではない。

金銭を支払い、性を買う「権利」があると主張する者たち、巨大なプラットフォームの陰に顔を隠して斡旋する者たち、そして女性の身体を商品化して違法な利益を得る者たちこそが、真に責任を問われるべき者たちである。

したがって、処罰の目的と方向も変えなければならない。

性搾取を可能にする需要を根本から断ち切り、性売買の斡旋や広告を行うプラットフォームを厳しく規制し、性搾取によって得られた犯罪収益を徹底的に没収・追徴しなければならない。

これこそが性売買防止法の本来の趣旨にかなう変化であり、今、私たちが求めている性売買処罰法全面改正の核心的な方向である。

私たちは、これ以上、女性たちの凄惨な現実を告発し続けなければならない社会を望まない。

これ以上、女性たちが処罰とスティグマへの恐怖によって沈黙しなければならない社会を望まない。

誰も性搾取の対象とされない社会。

脆弱な生活状況が、搾取の原因や手段とされない社会。

性搾取が日常的な「文化」とならない社会。

私たちは、そのような社会を望んでいる。

性売買防止法施行から22年。今こそ立法府が応える時である。

性搾取産業を解体し、性売買を経験した女性たちの人権を保障する法律へと、全面的に改正されなければならない。

この変化を実現するための性売買処罰法改正案が、9月17日に提出される予定である。

これ以上、先延ばしにする理由はない。

国会は、提出された改正案を速やかに審議し、成立させよ!

20余年前、女性たちの犠牲がこの社会に法律の制定という変化をもたらしたのなら、今度は、生き残った私たちの連帯と声によって、法改正という実践を実現する。

私たちは次のとおり要求する。

一、性売買女性に対する処罰とスティグマをやめ、被害者の人権を保障せよ!

一、デジタル空間とプラットフォームを利用した性売買・性搾取産業を厳しく規制せよ!

一、買春需要を根本から断ち切り、性搾取による犯罪収益を徹底的に没収・追徴せよ!

一、国会は、性搾取構造を解体するための性売買処罰法全面改正案を速やかに成立させよ!

今日、私たちはこの場で改めて宣言する。

性売買産業を拡大させる女性処罰を、今すぐやめろ!(×3)

国会は応答せよ! 性売買処罰法を全面改正せよ!(×3)

2026年9月15日

性売買処罰法全面改正のための全北共同行動 参加者一同

***

【連載|韓国の性売買経験当事者たちの声】

韓国では今、性売買をした女性への処罰規定を削除し、「性売買処罰法」を全面改正することを求める運動が全国に広がっています。

この連載では、法改正を求めて韓国各地で声を上げた性売買経験当事者の女性たちの発言を、一人ずつ紹介しています。

***

特別返礼品として、「性搾取に反対するフェミニスト(Feminists Against Sexual Exploitation)」Tシャツをご用意しています。受付は9月30日までです。

皆さまからのご支援が、虐待やDV、性搾取などの被害を受けた少女や女性たちが安心して過ごせる居場所と、回復を支える女性人権センターの実現につながります。

▽少女たちを追い詰める社会構造を変えるため、1日35円~活動を支えてください

Colaboへの寄付・活動支援はこちら
https://colabo-official.net/lp/donation.html

▽差別と暴力に抗う女性たちの活動拠点「女性人権センター」を市民の手で

性搾取の深刻な街、新宿・歌舞伎町に建設を目指しています。
https://colabo-official.net/projects/colabo_center.html

性売買の問題について、これからも現場で見てきたことや、女性たちの声を書いていきます。 よろしければ、無料の読者登録をして読んでいただけたら嬉しいです。

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