【対談公開|第4回(前編)】女性が立場を超え連帯するために——浜田敬子さん × 仁藤夢乃

第4回のゲストは、ジャーナリストの浜田敬子さんです。前編では、メディア業界で浜田さん自身が経験してきた女性差別やハラスメント、困難を抱える少女たちの生活の土台をともにつくるColaboの活動、そして、立場の違いによって分断されがちな女性たちが、共通する痛みを通じて連帯することの可能性について語り合いました。
仁藤夢乃 2026.07.31
誰でも

Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指して、ご寄付を呼びかけています。この対談では、女性人権センター建設に賛同する「1000人委員会」のメンバーとColabo代表の仁藤が、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別や性搾取の現状、女性たちが置かれてきた困難について語り合います。

今回のゲストは、ジャーナリストの浜田敬子さんです。

浜田さんは、1989年に朝日新聞社に入社し、記者、『週刊朝日』編集部を経て、『AERA』編集長に就任されました。2017年からはBusiness Insider Japan統括編集長を務め、現在はフリーランスのジャーナリストとして、執筆や講演、テレビ出演など幅広く活動されています。

今回の対談では、メディア業界で浜田さん自身が経験してきた女性差別やハラスメント、Colaboが少女たちとともに築いている生活の土台、そして、立場の異なる女性たちが痛みを分かち合い、連帯していくことの大切さについて語り合いました。

言葉だけでなく、実際の行動で少女たちを支える

浜田さんが最初にColaboを知ったのは、歌舞伎町や渋谷で行ってきたアウトリーチ活動や、ピンク色のバスを使った「バスカフェ」の活動だったといいます。

対談の中で浜田さんは、食べ物や生理用品を得るために、性売買を考えざるを得ない少女たちがいる現実に対し、Colaboが食事や衣類、住まい、安心して過ごせる場所を提供してきたことについて、次のように話されました。

すごいと思ったのは、言葉で啓蒙するだけでなく、実際に現場で活動してるってことなんですよ。
その子たちがそうしなくても済むように泊まれるところを用意したり、まずはご飯を食べさせてあげたり、お洋服をあげたり、安心できる居場所を提供したり……言葉だけでなく実際に行動に移しているということに、すごく感動しました。

食べるものや住むところがない少女たちにとって、性売買が「当たり前の選択肢」のようになってしまっている現実があります。

歌舞伎町のトー横や大阪のグリ下は、家庭や制度からこぼれ落ちた少女たちにとって、「ここに行けば、なんとか生き延びられるかもしれない」と思わされる場所になっています。さらに、少女たちを買うことを目的に、国内外から男性が訪れる状況もあります。

それでも私たちは、

普段は今の生活を変えたいと強く思えてなくても、何かあった時に助けてもらったり、守ってくれる大人に出会ったりすることで、「私にも性売買以外の選択肢があるかもしれない」と思えるようになると思うんです。

という想いで活動を続けています。

住まいだけではない、生活の土台をともに築く場所

Colaboが運営するシェアハウスは、単に住む場所を提供するだけの施設ではありません。

家族との生活の中で、掃除や食事、人との関係の築き方などを教わる機会がなかった少女たちと、毎日の暮らしを一緒につくっていく場所です。

安心できる住まいを得たことで、これまで感じる余裕のなかった過去の傷や将来への不安が一気に表れ、心身の調子を崩すこともあります。

住まいを確保すれば、すぐにすべてが解決するわけではありません。大人への不信感を抱えてきた少女たちと関係を築き、生活をともにし、何度でもやり直せるようにそばにいることが必要です。

浜田さんは、Colaboの活動について、このように話されました。

本来子どもが享受できるものを何も享受できてない人たちのために、食べ物や生理用品、住宅などを提供するだけでなく、生活の仕方や生き方についても一緒に考える。それがColaboのすごいところですよね。

差別に耐えることで、加害する側に回ってしまう

対談では、浜田さん自身が新聞記者として働き始めた当時の経験についても伺いました。

女性記者がまだ珍しかった時代、読者から「女の記者なんかに話せない」と言われ、自分の存在が「世の中にないもの」として扱われるところから、記者生活が始まったといいます。

長時間労働やハラスメントに疑問を感じても、「女性だから迷惑をかけているかもしれない」「面倒な存在だと思われたくない」と考え、声を上げることができなかった。

そして、次第に自分自身が耐えるだけでなく、後輩の女性たちにも「少しの我慢だから」「若いうちだけだから」と言う側に回ってしまったと、浜田さんは振り返ります。

被害を受けた側が、ある時から加害に回るんだよね。
自分の存在が「あの先輩は耐えたんだから私も耐えなきゃいけない」って、そういう風に思わせてしまった。
自分たちが当時声を上げてこなかったせいで、この被害をずっと続けさせて、拡大させてしまったんじゃないかと気づくまでに、とても時間がかかりました。

女性差別のある組織の中で生き残るために、女性自身が男性中心の価値観を身につけ、差別やハラスメントに適応しなければならなくなる。

それは、性売買の中にいる女性たちが、暴力や搾取のある状況を「自分で選んだこと」「自分がうまくやるしかない」と受け止めさせられていくこととも重なります。

声を上げられる時期は、人によって違う

浜田さんは、AERA編集長を経て、Business Insider Japanの統括編集長となり、自分が意思決定できる立場になった時、ようやく性差別や人権侵害について、はっきりと発信できるようになったと話します。

しかし、発信を始めた浜田さんに対して、ある男性から「なぜこれまで言ってこなかったのに、急に言い出したのか」と言われたことがあったそうです。

今働いている女性は多かれ少なかれ、「私は女性として差別を受けたことがありません」って言ってる人でさえも、差別を受けてきた現実があるんですよ。
でもそれを封印していたり、気づかないふりをしたり、黙っていたり、なかには声を上げて戦っている人もいる。
そこにはグラデーションがあって、言葉に出せる時期も人それぞれ違うわけですよ。

被害を受けたからといって、すぐにそれを被害だと認識し、声を上げられるわけではありません。

置かれている立場や生活、周囲との関係によって、声を上げることで、さらに多くのものを失うこともあります。

だからこそ、声を上げられるようになった人が声を上げること、そして、その声を社会が受け止め、広げていくことが必要です。

女性は、共通する痛みでつながることができる

女性たちは、学歴や仕事、結婚、出産、子育てなど、置かれている状況によって分断されがちです。

社会的に成功しているように見える女性と、性売買や貧困の中にいる女性は、まったく異なる世界を生きているように見られることもあります。

しかし、浜田さんは、女性として受けてきた傷やつらさによって、根っこの部分ではつながっていると話します。

学歴とか、働いているか働いてないか、結婚しているかしてないか、子どもがいるかいないかで女性は分断されがちだけど、それでも女性として受けた傷や辛さはあるから、やっぱり根っこで繋がっていると思うんです。

Colaboに相談する少女たちも、自分で性売買を選択したと思わされていることがあります。

しかし、その背景には、家庭での虐待や貧困、社会からの孤立、住まいのなさ、支援機関から見捨てられた経験などがあります。

構造的な問題によって選択肢を奪われているにもかかわらず、結果だけを見て「自己責任」とされる。そのことが、女性たちから声を上げる力を奪っています。

痛みや怒りを、社会を変える力にする場所を

メディアの世界でも、企業でも、NPOや市民運動の現場でも、いまだに意思決定を担うのは男性が中心です。

女性たちは、その中で差別やハラスメントを経験しても、身近な人には話せず、怒りや傷を一人で抱え込んでいます。

仁藤は、女性人権センターを、そうした女性たちが痛みや怒りを分かち合い、社会を変えるための力にしていく場所にしたいと話しました。

女性人権センターができたら、そういう女たちの痛みの分かち合いや怒りの共有をして、変えていくための力にできるような、そういうつながりが生まれる場所にしたいと思っています。

女性人権センターは、困難を抱える少女や女性が逃げ込み、安心して休み、生活を立て直すための場所です。

同時に、立場の異なる女性たちが集まり、経験を語り合い、女性差別や性搾取をなくすための知恵と力を持ち寄る、連帯の拠点でもあります。

浜田さんとの対談を通じて、性差別の中で生きてきた女性たちの経験は、社会的な立場を超えてつながり得るものだと、改めて感じました。

ぜひ、対談記事と動画をご覧ください。

▼対談記事(前編)
「女性が立場を超え連帯するために」

▼対談動画

後編では、男性が自身の加害性や特権性とどのように向き合うのか、性売買をなぜ労働ではなく人権の問題として考える必要があるのか、そして女性人権センターが担う役割について、さらに掘り下げて語り合います。

***

女性人権センター建設プロジェクト

第2回寄付キャンペーン開催中

Colaboでは、女性や少女が、困った時に搾取や暴力に行き着くことなく、安心して相談し、休み、生活を立て直すことのできる「女性人権センター」の建設を目指しています。

第2回寄付キャンペーンでは、まず寄付総額1億円の達成を目指しています。

1億円まで、あと395万円です。

1億円を達成した後は、9月末までに総額1億5,000万円を目標に、引き続きご寄付を呼びかけます。

キャンペーン期間中は、女性人権センター建設プロジェクトの特別返礼品もご用意しています。

女性たちが立場を超えてつながり、差別や暴力のない社会をつくるための拠点を、みなさんと一緒につくりたいと思っています。

ぜひ、この記事や動画を周りの方にシェアし、女性人権センター建設プロジェクトを広めてください。

ご寄付と応援を、どうぞよろしくお願いいたします。

▼女性人権センター建設プロジェクト特設ページ

▼ご寄付はこちら

第2回寄付キャンペーンの特別返礼品として、「性搾取に反対するフェミニスト(Feminists Against Sexual Exploitation)」Tシャツをご用意しています。受付は9月30日までです。

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