「まずは知ることから」変化を導く連帯の拠点へ――医師・前田佳子さんとの対談動画を公開
女性人権センター建設に賛同する「1000人委員会」対談、第7回を公開しました。
今回のゲストは、医師で、公益社団法人日本女医会会長の前田佳子さんです。
前田さんは、女性医師が働き続けられる環境の整備や、医学・医療の世界に残る性差別の撤廃、男女共同参画の推進に取り組んでいます。また、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の共同代表として、反戦・平和の活動にも携わっています。
対談では、Colaboへの激しいバッシングをきっかけに前田さんが連帯してくださった経緯から、医療につながることのできない少女たちの現実、医学界に根強く残る女性差別、アフターピルへのアクセスを阻む制度や偏見について語り合いました。
そして、職業や世代、置かれた立場を超えて女性たちが出会い、社会の現実を知り、声を上げるために、なぜ今、女性人権センターが必要なのかを考えました。
🎬 対談動画
「まずは知ることから」変化を導く連帯の拠点へ
バッシングの渦中でつながった連帯
前田さんがColaboの存在を知ったのは、2022年に始まったColaboへの攻撃がきっかけだったといいます。
当時は、Colaboが不正を行っているかのようなデマが大量に広げられ、活動現場への妨害も激しくなっていました。そのような中で前田さんは、早い段階から「Colaboと仁藤夢乃さんを支える会」に参加し、連帯の声を上げてくださいました。
せめて気持ちの上だけでもサポートできたらいいなと思って、声を上げさせていただきました。
前田さんは、田中優子さんや菱山南帆子さんなど、さまざまな現場で声を上げる女性たちと活動を共にする中で、「みんなで手をつなぐこと」の重要性を感じていると話します。
攻撃されている人や団体に対して、「何か問題があるのではないか」と距離を取るのではなく、何が起きているのかを知り、手を取り合う。そうした一人ひとりの行動が、攻撃によって孤立させられそうになった活動を支える力になりました。
災害時にも女性や子どもを狙う性売買業者
対談では、2024年1月に発生した能登半島地震の被災地での活動についてもお話ししました。
災害によって家族を亡くしたり、生活や収入の基盤を失ったりした女性や子どもたちがいる場所には、支援者だけでなく、性売買業者や女性を搾取しようとする人たちも近づいてきます。
能登でも、地震発生直後から性売買業者とつながりのある人たちが現地に入り、炊き出しなどを行っていました。
普段、家庭で虐待を受け、公的機関にも適切につながれず、大人への不信感や諦めから路上に出ている子どもたちに積極的に近づくのは、性売買業者や買春者であることが少なくありません。災害時にも同じことが起きます。
Colaboが現地に入り、女性や子どもたちに声をかけ、継続して顔を見せることは、それ自体が業者による搾取をやりにくくすることにつながります。
困ったときに、搾取する人ではなく、安心して相談できる人や場所を思い出してもらえるようにすること。それも、Colaboが被災地で活動する大切な理由の一つです。
医療を必要とする人ほど、病院に行くことができない
Colaboが出会う少女たちの中には、具合が悪くても病院に行くことのできない人が大勢います。
お金がない、保険証を使えない、親に受診したことを知られたくない。未成年で一人では受診を断られる。予約した時間に間に合うことが難しい。医師や受付の人から嫌な顔をされた経験がある。
こうしたさまざまな事情が重なり、医療へのアクセスを妨げています。
家庭で虐待を受けてきた子どもは、体調不良を訴えると「またお金がかかる」「体調管理ができていない」と責められることがあります。そのため、具合が悪くても我慢し、自分の苦しさを人に伝えずに耐えることが、生き延びるための習慣になっています。
病院に行けたとしても、医師に迷惑をかけないように振る舞おうとして、症状や置かれている状況をうまく説明できないことがあります。その態度を医療者から否定的に受け取られ、「また怒られるかもしれない」と次の受診がさらに難しくなることもあります。
前田さんは、医療機関の中に、性被害だけに限定せず、身体の不調や精神的な悩みについて誰でも相談できる窓口が必要ではないかと話しました。
まずは、そういう子たちがいることを認識として持ってもらうことが必要です。
医療を必要としている人ほど、予約を守れなかったり、助けを求める言葉をうまく出せなかったりする。そのことを「本人のやる気」や「自己管理」の問題にせず、背景にある暴力や困窮を理解する医療者が増えることが必要です。
「なぜそんなことをしたの」と責められる少女たち
未成年の少女が妊娠の不安を抱えて一人で婦人科を受診したとき、医師から「なぜそんなことをしたのか」と責められたり、「親と一緒でなければ診察できない」と帰されたりすることがあります。
しかし、一人で病院に来ていること自体に、親に話せない事情や、家庭に安心できる関係がないという背景があるかもしれません。
それにもかかわらず、「そんな服装をしていたから」「そこに行ったから」「自分で選んだことだから」と自己責任にされる。その結果、病院が怖くなり、受診できないまま中絶可能な時期を過ぎてしまった少女もいました。
今、トー横などでは、病院に行けない子どもたちに対して、正体の分からない大人が薬を渡すことも起きています。緊急避妊薬だと言って薬を渡したり、市販薬を大量に入手して子どもたちに与えたりする人がいるのです。
子どもたちにとっては、正規の医療機関よりも、薬やお金を簡単に渡してくる大人の方が身近な存在になってしまうことがあります。その関係が、性暴力や性搾取、薬の過剰摂取につながる危険もあります。
専門家や医療者が、困難を抱える子どもたちにとって、もっと近く、安心してつながれる存在になる必要があります。
医学界に残る性差別
前田さんは、医学・医療の世界で長年女性差別を経験してきました。
2018年には、複数の医学部で女子受験生の得点を一律に減点するなど、女性の合格者数を意図的に抑えていた不正入試が明らかになりました。
前田さんにとって驚きだったのは、不正そのものだけではなく、それを知った社会が大きく驚いたことだったといいます。
医学部に入学する女性の割合が長年不自然に低く抑えられていることを、医学界にいる女性たちは以前から感じていました。女性の医師が少なく、セクシュアルハラスメントがあっても声を上げにくい環境も当たり前のように存在していました。
現在は、医学部に入学する女性の割合は増えてきました。しかし、医師として働き続けるための環境整備は、まだ十分ではありません。
子育てや介護を女性が担うことを前提に、「女性が家事や育児をしながらでも続けられる職場」をつくろうとする発想そのものが残っています。
必要なのは、女性だけが仕事を調整する仕組みではなく、子育てや介護を性別にかかわらず担うことのできる社会と職場です。
女性を役員に増やそうとすると、「女性だけを優遇するのはおかしい」と反発する人もいます。しかし、これまで男性が有利になるように制度や慣習がつくられてきたのであり、女性と男性は今も同じ条件に立っているわけではありません。
そもそも男性は高い下駄を履かされ、女性は低いところを歩いてきた。まだ全然、同じ高さには立っていません。
アフターピルを買うために、体を売る少女がいる
対談では、緊急避妊薬、いわゆるアフターピルへのアクセスについても話しました。
日本でも薬局で購入できるようになることは大きな前進です。しかし、価格が高く、身分証明書が求められるなど、必要とする人が実際に利用するための壁は残っています。
海外では、アフターピルが日本よりはるかに安い価格で販売されていたり、無料で提供されていたりする国もあります。
一方、日本では、アフターピルを購入するためのお金を得ようとして、性売買をする少女がいます。
妊娠を避けるために必要な薬を手に入れるため、再び性的な被害や搾取にさらされる。まさに本末転倒の状況です。
身分証明書を持っていない子どもや、薬局に行くことのできない少女に対して、買春者が「アフターピルを渡す」と言い、性暴力の対価として利用することもあります。
渡された薬が本物かどうか分からなくても、少女たちはそれを信じて飲むしかありません。
アフターピルを薬局で販売することに対しては、「女性が気軽に性行為をするようになる」と反対する医師もいました。しかし、現実には、性暴力を受けたり、パートナーが避妊に協力しなかったりする女性がいます。
女性が自分の身体について選択し、妊娠を避けるための手段を持つことは、女性の権利です。それを「女性の性的逸脱を防ぐ」という管理の問題にすり替えること自体が、根深い女性差別を表しています。
現場を知らないエリートたちの「勘違い」
医師や政治家など、社会的な地位や専門知識を持っている人が、必ずしも困難な状況に置かれた女性や子どもたちの現実を理解しているとは限りません。
かつてColaboが自民党の会合に呼ばれ、少女の性搾取について話した際、産婦人科医でもある元国会議員から、「母親が夕方5時までに帰宅して食事を作り、子どもに愛情を注いでいれば性被害は起きない」と言われたことがありました。
性被害の原因を、加害者ではなく、母親や家庭の問題に置き換える発言です。
また、別の医師で立憲民主党の国会議員だった人物は、歌舞伎町の夜の店を利用し、女性たちから相談されていると自慢して、「この地域のことをよく知っている」と語りました。
しかし、お金を払って女性に接客をさせている立場の男性が、「女性から頼られている」と思い込んでいるだけかもしれません。女性たちは客を立て、機嫌を損ねないように振る舞っている可能性があります。
その関係性を理解せず、自分は女性を助けている、女性から信頼されていると思い込む男性が、医師や議員として政策に関わっています。
現場を知らないまま、自分は理解していると思い込んでいる人たちの認識が、女性を追い詰める制度や政策につながります。
街を歩くことで見えてくる性搾取の構造
歌舞伎町には、性売買を斡旋する業者、女性を見張る男たち、買春者、スカウトが日常的に集まっています。
Colaboが実施している「夜の街歩きスタディーツアー」で一緒に街を歩くと、何げない通行人のように見えていた人たちが、どのように女性を性売買へ誘導しているのかが見えてきます。
若い女性が新宿の街を歩けば、何人ものスカウトから声をかけられます。
「LINEを交換するだけで1000円あげる」
「軽い仕事からできる」
「困っていない?」
「いい仕事があるよ」
その1000円があれば、生理用品を買える。数日分の食事を買える。そういう状況に置かれた女性がいます。
一度LINEを交換すると、その後も繰り返し連絡が届き、最初に聞いていたものとは違う、より搾取的な性売買の仕事へと誘導されていきます。
一方で、福祉や医療、生活支援につなげる人は、業者やスカウトと比べて圧倒的に少ないのが現状です。
街を歩くだけで、「食べるものがある」「住む場所がある」「仕事について相談できる」といった選択肢を女性が手に入れられる社会にしたい。
そのためには、まず、街で何が起きているのかを多くの人に知ってもらう必要があります。
現場を見ることは、教科書で知識を得ることとは全く違う。
前田さんは、医療の世界でも、患者の苦しみを直接見ることで初めて分かることがあると話します。
社会を動かすための出発点は、現実を知ることです。
「女性の人権」を語ると、なぜ過激だと言われるのか
女性や子ども、障害のある人、患者など、弱い立場に置かれやすい人にも同じ人権がある。
本来は当たり前のはずのことを一生懸命訴えると、「左寄りだ」「過激だ」と言われることがあります。
女性の健康支援やジェンダー平等に取り組む医師の団体であっても、活動を一歩進めようとすれば、内部や外部から批判を受けることがあります。
職場では女性差別について話せない。周囲に同じ問題意識を持つ人がいるか分からない。声を上げたいけれど、どこで誰とつながればよいか分からない。
そう感じながら、一人で抱えている人は少なくありません。
女性人権センターは、そうした人たちが職業や年齢、これまでの生活の違いを超えて出会い、本音を持ち寄ることのできる場所にしたいと考えています。
前田さんは、センターについて次のように話しました。
困っている人が、安心して相談したり、泣きついたりできる場所が必要です。家庭にそれを求められないのであれば、より一層、受け止める懐のようなものが必要だと思います。
路上で性搾取の危険にさらされている少女と、医学界の中で女性差別に直面する女性医師。
置かれている環境は異なって見えても、どちらも、男性を中心につくられてきた同じ社会構造の中で、自分の人生や身体について選ぶ権利を奪われています。
立場の異なる女性たちが、互いの痛みを知り、「それは個人の問題ではない」と声を上げることが、社会を変える力になります。
女性人権センターを、知り、つながり、行動する拠点に
女性人権センターは、困難を抱えた少女や女性が相談し、安心して過ごすためだけの場所ではありません。
性差別や暴力、性搾取について学び、社会の現実を知り、それぞれの立場から何ができるかを考える市民の拠点でもあります。
声を上げたいと思いながら、どこにつながればよいか分からなかった人が出会う場所。
職場や家庭では話せなかった本音を持ち寄り、一緒に怒り、支え合う場所。
医療、法律、福祉、教育、労働、政治など、異なる分野で活動してきた人たちが出会い、連携する場所。
困ったときに、搾取する人ではなく、信頼できる人や支援につながるための場所。
女性人権センターを、そうした新しい連帯が生まれる拠点として実現したいと思っています。
その第一歩は、今起きていることを知ることです。
ぜひ前田佳子さんとの対談をご覧いただき、周りの方にもシェアしてください。
第2回寄付キャンペーン実施中
2026年6月15日〜9月30日
女性人権センターの建設は、単に一つの建物を建てるプロジェクトではありません。
差別や暴力、性搾取に抗い、女性や少女が一人にされない社会をつくるための、市民の連帯を広げる取り組みです。
建設のためには、総額10億円が必要です。
日頃からColaboを支えてくださっている方の中には、決して生活に余裕があるわけではない中で、大切なお金を寄付してくださる方がたくさんいます。本当にありがとうございます。
同時に、少女たちが置かれている現実をこれまで知らなかった人や、医療、企業、専門職など、さまざまな場所にいる人たちにも、この問題を知り、プロジェクトに加わっていただきたいと思っています。
動画の視聴やシェア、ご寄付を通じて、女性人権センターを共につくる仲間になってください。
▼対談動画
「まずは知ることから」変化を導く連帯の拠点へ
https://www.youtube.com/watch?v=ZK89mkh59u8
▼女性人権センター建設プロジェクト特設ページ
https://colabo-official.net/projects/colabo_center.html
第2回寄付キャンペーンの特別返礼品として、「性搾取に反対するフェミニスト(Feminists Against Sexual Exploitation)」Tシャツをご用意しています。受付は9月30日までです。

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