【地平連載】性売買から離れて、生きていくために――日韓の性売買経験当事者たちの交流

先日、韓国の性売買経験当事者ネットワーク「ムンチ」と日本の性売買経験当事者ネットワーク「灯火」のメンバー30人以上が集まり、2泊3日の合同ワークショップを行いました。「私だけがこの経験をしたんじゃなかった」と痛みを分かち合い、性売買の現実を語り合いました。9月5日発売の『地平』10月号に書いています。性売買の場から離れるだけでは終わらない、その後の人生を支えるために何が必要なのかを考えます。
仁藤夢乃 2026.09.20
誰でも

8月のある夜、歌舞伎町のホテルの前で、14歳と15歳の少女たちに出会いました。

二人の腕にはいくつものリストカットの傷があり、互いの名前がカッターで刻まれ、血が滲んでいました。

「疲れた」と話す少女たちは、地方から歌舞伎町に来たばかりでした。

彼女たちがいたホテルは、半グレ組織が少女たちを管理売春させる拠点としてよく使われている場所でした。

最近、路上で性売買をする女性への取り締まりや未成年者の補導が強まるなか、少女たちを路上に立たせず、ホテルの中に待機させ、男性が路上やSNSで客を集めるなど、性売買はさらに見えにくい形になっています。

目の前に、傷つき、疲れ切り、男たちにお金を取られ、それでもこのあと客を取るように言われている少女がいる。

それなのに、その子をそこから離れられるように介入し、「もうここに戻らなくても生きていけるよ」と言えるだけの仕組みが、日本にはありません。

今夜どこで寝るのか。明日から何を食べるのか。追ってくる人からどう守るのか。学校に戻りたいならどうするのか。傷ついた心と身体をどう支えるのか。その先の仕事や暮らしをどう築いていくのか。

そこまでなければ、「ここから出ていい」と言われても、出ることはできません。

今回の連載「歌舞伎町で。」では、7月に行った、韓国と日本の性売買経験当事者ネットワーク「ムンチ」と「灯火」による合同ワークショップについても書きました。

日韓から30人以上が集まり、6人の当事者が全員の前で自分の経験を語りました。

国も言葉も、生きてきた時代も、性売買の形も違う。それでも、語られる経験には重なるものがありました。

家にいられないこと。貧困や孤立。誰かに必要とされたいと思うこと。

そうした状況につけ込み、男性が金を払って女性の身体を利用し、業者がそこから利益を得る。そして、傷ついた女性の側に「自分で選んだのだろう」と責任を負わせる。

韓国の当事者の一人は、仲間たちの話を聞きながら、「構造が同じだから経験も同じなんだ」と話しました。

ワークショップでは、「性売買したことは、私が悪いんじゃない。購買者と業者が悪いんだって思えるようになった」「みなさんのおかげで、私が人間として生きられる」「またこの一年生きていく力をもらえた」という言葉も聞かれました。

性売買から離れるとは、その場から女性を連れ出すことだけではありません。

安心して眠れる場所があること。
食べるものがあること。
追ってくる人から守られること。
自分の身体を売らなくても暮らせること。

そして、傷ついた心と身体を休ませ、自分が悪かったのだと責め続けなくてもよくなること。人を信じ、一緒に泣いたり笑ったりしながら、自分の人生を生きられるようになること。

ホテルの前で、このあと客を取るように言われていた少女たちにも、この先の人生があります。

少女たちを路上から見えなくするのではなく、性売買をしなくても生きていけて、自分自身の幸せを望める社会をどうつくるのか。

ぜひ読んでいただけたらと思います。

【連載|韓国の性売買経験当事者たちの声】

韓国では今、性売買をした女性への処罰規定を削除し、「性売買処罰法」を全面改正することを求める運動が全国に広がっています。

この連載では、法改正を求めて韓国各地で声を上げた性売買経験当事者の女性たちの発言を、一人ずつ紹介しています。

***

特別返礼品として、「性搾取に反対するフェミニスト(Feminists Against Sexual Exploitation)」Tシャツをご用意しています。受付は9月30日までです。

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