韓国で性売買予防教育をめぐるオンライン講演――突きつけられた「性(先)進国・日本」の現実
6月10日、韓国のGOMA(Gender Justice Organization for More Action/ジェンダー正義の実現に向けて行動するネットワーク)の招待を受け、韓国各地でジェンダー暴力予防教育に取り組む講師や韓国の女性運動関係者、支援団体、研究者等に向けてオンライン講演を行いました。
講演では、「性売買大国・日本で反性売買を叫ぶ」(韓国で12月に出版された本の、私の担当箇所のタイトルに韓国側がつけたもの)をテーマに、歌舞伎町やトー横で少女・若年女性たちに何が起きているのか、SNSやホストクラブ、スカウト、買春者によってどのように性搾取へと誘導されているのかを、Colaboの現場で見えている実態からお話ししました。
また、日本の売春防止法と風営法が生み出してきた構造的課題、買春文化の形成過程についてお話ししました。日本では売買春を建前上は禁止しながら、風営法のもとで性産業が巨大化しています。性売買は「個人の選択」ではなく、貧困、虐待、孤立、ジェンダー不平等、買春文化によってつくられる構造的暴力であるにも関わらず、売春防止法では買う側の責任が問われず、性を売る状況に置かれた女性たちだけが問題視されてきたことも共有しました。
現在法務省で進められている売春防止法改正の議論について報告し、女性の非犯罪化、買春処罰、性売買を女性に対する人権侵害として位置づける法制度の必要性について問題意識を共有しました。さらに、Colaboに対するバックラッシュや女性支援への攻撃についても共有し、日本における反ジェンダーやミソジニーの広がり、そのなかで女性支援が攻撃の対象となっている現状を報告しました。
性売買予防教育について
質疑応答では、まず「日本では青少年を対象にした性教育や性暴力防止教育、性売買予防教育は行われているのか」という質問がありました。
私は、日本の性教育は妊娠や性感染症など生物学的な内容が中心で、性的同意や対等な関係性、性搾取や売買春について学ぶ機会はほとんどないことを伝えました。学校で「売買春」や「性搾取」という言葉を使うこと自体が難しい場合もあり、性売買予防教育はほとんど行われていないのが現状です。
さらに、日本では「お金があれば同意がある」と受け止められてしまう風潮が根強く、性教育の場でも性売買が暴力であるという視点が十分に共有されていない現状についても紹介しました。
東京都が以前、高校生向けに配布したJKビジネス防止の啓発資料を紹介しながら、少女に「やってはいけない」と自己責任を求める内容である一方、買う側や搾取する側の責任にはほとんど触れられていないことも共有しました。
このやり取りを通して、性売買をジェンダー暴力として予防教育の中で扱ってきた韓国と、性売買そのものを教育でほとんど扱うことができない日本との違いが改めて浮き彫りになりました。
韓国では、2004年の性売買防止法制定以降、国や自治体には性売買防止のための教育・広報を行う責務が法律上定められています。学校で行われる性教育・ジェンダー暴力予防教育の中で、性売買を女性への暴力・性搾取として扱われています。また、学校だけでなく、教員・公務員・青少年指導者などに対する法定の暴力予防教育や研修の中でも、性売買がテーマとして扱われています。
私も性売買予防教育を受講したいですし、私たちこそ学ばなければなりません。
「性(先)進国」として知られる日本
韓国では近年、日本のAVや風俗文化を「性(先)進国」として肯定的に紹介する動画やコンテンツが数百万回再生されるなど、大きな影響力を持っていることも問題になっています。
若い男性たちが「性進国・日本」に憧れたり、日本のAV業界が韓国で「大人フェス」等のイベントを開催することが社会問題となっています。そうした状況から、日本の性売買の実態、AVがどのように流通し社会に広まっているのか等について講演の依頼が以前もあり、引き受けたことがあります。
研修の参加者からは、「韓国では、日本の性産業を『自由で開放的な文化』として紹介する動画を若者が何気なく視聴しています。そのようなコンテンツを消費する韓国社会に対して、日本の活動家として何を伝えるべきでしょうか」「日本では若い女性を買う男性はどのように見られているのでしょうか」といった質問が寄せられました。
私は、日本では女性を性的に消費することがあまりにも当たり前になった結果、多くの人が性売買をジェンダー暴力や搾取として認識できなくなっていることをお話ししました。女性を商品として扱う文化は、女性差別やミソジニーを社会に内面化させ、何が暴力で何が搾取なのかさえ見えなくしてしまいます。日本の現状を反面教師として受け止め、韓国ではそのような状況をつくらないための教育や社会的議論を続けてほしいと伝えました。
日本では買春が男性同士の付き合いや「大人になる通過儀礼」として扱われることも少なくなく、人権派と呼ばれる人や政治家、弁護士、芸能人なども買春を隠す必要がない社会である一方、性を売った女性だけが強い偏見や差別を受け続けています。このような二重基準が、日本社会で性搾取が見えにくくなっている背景にあることをお話ししました。
参加者からは、「日本の性“文化”を『自由』として消費することの危険性を、韓国社会にも伝えていかなければならない」との発言がありました。
Colaboへの質問も多く寄せられました。日本では現場で性売買被害に向き合う団体はまだ少なく、深刻なバックラッシュを受けることから、多くの団体が性搾取の問題に正面から踏み込まない現状についても共有しました。
講演の最後には、参加者から「本を読んだだけでは分からなかった日本の現場を直接知ることができた」「韓国の義務教育でジェンダー暴力予防教育を続けてきた意味を改めて感じた」「日本でも韓国でも、性搾取を終わらせるためにもっと連帯していきたい」といった感想が寄せられました。
また、「日本でも韓国でも、性搾取を女性への暴力・人権侵害として捉え続けることが重要だと改めて感じた」「韓国の経験を日本とも共有しながら、ともに社会を変えていきたい」という声もあり、両国の運動が学び合い、支え合うことの意義を改めて確認する機会となりました。
韓国から学び、日本の制度を変えるために
韓国では、性売買を女性への暴力・人権侵害として捉え、当事者とともに制度を変えてきた運動の蓄積があります。今回の講演は、日本の現状を伝えるだけでなく、韓国の仲間たちと学び合い、性搾取のない社会に向けた連帯を深める機会にもなりました。
日本でも、買春者や業者の責任を問い、性売買のなかにいる女性たちが処罰されるのではなく支援につながる制度をつくっていくために、引き続き声を上げていきます。
性売買の問題について、これからも現場で見てきたことや、女性たちの声を書いていきます。 よろしければ、無料の読者登録をして読んでいただけたら嬉しいです。
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