「見えなくする」ことでは、性売買問題は解決しない
法務省では現在、売春防止法の改正に向けた検討会が行われています。
検討会では、性売買が「景観」や「風紀」の問題として語られています。
女性たちを路上から見えなくしても、性売買を生み出している構造は変わりません。
そこに立つ女性たちの背景も、買春者による需要も、女性を性売買へと追い込んで利益を得る業者も、そのままに、問題を見えなくさせるだけです。
この発想は、今回初めて現れたものではありません。売春防止法のもとでは、制度上は2024年まで(実際の収容は2017年まで)女性たちは補導院に収容され、花嫁修行をさせられました。トー横で子どもたちを排除する対策や、大久保公園で女性たちを路上から追い払う対応にも、「見えなくすれば問題は解決する」という発想が繰り返されています。
海外では、性売買を女性への暴力やジェンダー不平等の問題として位置づけ、買春者を処罰するとともに、売る側を支援する法制度へと転換してきた国もあります。
日本でも、女性を「見えなくする」ことではなく、性売買問題を解決するための議論が必要です。
ぜひお読みください。


売春防止法改正に向けた法務省の「売買春に係る規制の在り方検討会」では、買春処罰の導入に向けた議論が続けられている。
法務省の説明によると、6月の検討会では、売る側は支援の対象であり、犯罪者として扱うのは適当ではないとして、売る側のみが処罰の対象となる売春防止法5条は廃止し、売る側を非犯罪化すべきという意見や、買春者がいるから売春が生み出されているという需要と供給の構造からすると、買う側を処罰し、需要を絶つことの必要性を述べた委員もいたという。現行法では犯罪化されていない「買う側」の勧誘を犯罪化すべきといった意見があった一方で、買春の問題を景観や公衆に対する迷惑性、街の風紀を乱すという観点で捉える委員からは、売る側・買う側の行為を法で規制するのではなく、むしろ非犯罪化し、勧誘行為等は地域の実情に応じて条例で定めるべきだという意見もあったそうだ。
なぜ、そのような意見が出てくるのか。
それは売春防止法の保護法益に関係する。日本には性売買を女性に対する人権侵害として捉える法律がなく、売春防止法は1条で、「社会の善良の風俗」や「性道徳」を守ることを目的としている。その保護法益に基づいて、5条は公衆に対する迷惑性の観点から、「売る側」の勧誘等の行為を処罰対象としている。
性売買の問題を「景観」や「風紀」の問題として捉える委員の中にも、買う側の処罰に前向きな発言をする委員もいる。
しかしそれは、「買う側の勧誘行為等によっても、売る側と同じように公然に対する迷惑性や風紀を害する」ことを理由に、現行法で買う側に罰則がないことを不均衡とするものだ。
そうした考えの委員からは、「売る側」についても、様々な事情があったとしても、公衆に迷惑をかける行為をしていることに対する処罰は維持すべきという意見もあったという。
性売買の路上勧誘が景観や公然迷惑性の問題として語られるとき、なぜ女性たちがそこに立っているのか、それにより誰が利益を得ているのかという性売買の構造が見えなくなってしまう。
私たちの社会は、性売買を「景観」や「風紀」の問題として扱うのか、それとも「人権」や「搾取」の問題として扱うのかが今、問われている。
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